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名古屋地方裁判所 昭和24年(ワ)561号 判決

原告 多田清一 外一名

被告 名古屋交通労働組合

右代表者 執行委員長

一、主  文

原告等の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告等の負担とする。

二、事  実

原告等訴訟代理人は「被告が昭和二十三年八月四日原告両名に対してなした組合員除名処分は無効なることを確認する。訴訟費用は被告の負担とする」との判決を求め、その請求の原因として次のように述べた。

一、被告は名古屋市交通局の従業員及び同組合中央委員会の承認をえた者をもつて組織する労働組合であり、原告両名は名古屋市交通局の従業員であつて同局高辻車庫に勤務し被告組合の組合員である。

二、原告両名は昭和二十三年八月八日被告組合高辻支部長aから組合より除名する旨の通告を受けたが、その除名の理由として挙げられたのは次のごとくであつた。

(イ)  原告Aは昭和二十三年七月二十二日勤務時間外に当時争議中の愛知時計労働組合の闘争を応援するため、同会社工場前の電柱に「自由か奴れいか団結だ頑張れ」と書いた日本共産党名交高辻細胞の署名入のビラを貼付した。右は被告組合の本部規約第十条及び支部規約第二十三条に違反する。すなわち、同ビラの日本共産党名交高辻細胞という字句は被告組合高辻支部全体を意味するから、被告組合の機関にはからずに右名称を使用したのは組合機関を無視し組合の名誉をき損したものであるというのである。

(ロ)  原告Bは同年七月末頃名古屋市交通局高辻車庫において「信鈴」という日本共産党名古屋市交通局細胞群機関紙を執務時間外に同局従業員に配付した。右は被告組合の本部規約第十条及び支部規約第二十三条に違反する。すなわち、右機関紙配布行為は組合機関を通じてなされていないから組合の機関を無視し統制を乱したものであり、且つ右「信鈴」の記事中には被告組合を批判する記事が載せられているから、被告組合の名誉をき損したというのである。

三、しかしながら、原告等に対する右除名処分は次の理由によつて無効である。

1  右除名処分は被告組合中央委員会の決議を経ていないから手続にかしがある。

2  右除名処分はその理由において不法不当である。

(イ)  原告Aについて

原告が、執務時間外において同じ労働者の団体である愛知時計労働組合の闘争を応援するため前記のごときビラを貼つたことは、労働者として当然なすべき行為であり原告A個人に許された自由活動の範囲内のものである。およそ国民の政治的社会的活動は憲法第十四条第二十一条等の規定で保障されており、又被告組合と名古屋市との間の労働協約第五条に「市は組合員の政党加入及び組合並に組合員の政治活動の自由を認める」と明記しているによつても疑ないところである。従つて、原告等は前記行為について何人からもその責任を追及さるべきではない。

又原告Aの貼付したビラには日本共産党名交高辻細胞の署名が記されている。しかしこれは一読すれば誰にも判るように、被告組合の署名ではないし、又原告Aとしても被告組合の組合員としてでなく日本共産党員の資格においてこれを貼つたのである。従つて右ビラ貼りには被告組合はなんらの関係なく、原告Aは右行為について被告組合の承認を受ける必要もなければ義務もない。名交高辻の名称を日本共産党細胞の上に冠したことも、同党が国法の認める合法政党である以上少しも被告組合の名誉をき損することにならないのである。

(ロ)  原告Bについて

原告Bが、従業員の執務時間外に「信鈴」を特定の者に配付したことは原告B個人に許された政治的活動の範囲内のものであり、かかる行為につき被告組合にはかる必要は少しも存しない。又右「信鈴」中に被告組合を批判する記事が載せられてあるにしても、この程度の内容の批判は言論の自由の範囲内のことに属しなんら他から非難さるべきでなく、且つまた右記事の執筆者は原告Bではない。

四、以上のような次第であるから、原告両名に対する被告組合の除名処分は無効であり、ここにその無効確認を求めるため本訴に及んだ次第である。(立証省略)

被告組合代表者は原告等の請求を棄却するとの判決を求め、答弁として次のように述べた。

一、被告組合が名古屋市交通局の従業員及び同組合中央委員会の承認をえた者をもつて組織する労働組合であること、原告両名が昭和二十三年八月四日被告組合高辻支部長aより組合員除名の通告を受けたこと及び原告Aに対する除名理由の一が愛知時計労働組合の争議中共産党名交高辻細胞の署名入のビラを貼付し被告組合の名誉をき損したこと、又原告Bに対する除名理由の一が名古屋市交通局高辻車庫において日本共産党細胞群機関紙「信鈴」を同局従業員に配付し被告組合の統制を乱したことであることはこれを認めるが、その他の原告等主張事実はこれを否認する。

原告等はかねて名古屋市交通局従業員として同局高辻車庫に勤務し被告組合の組合員であつたが、昭和二十三年八月四日被告組合は原告両名を組合規約第十条及び支部規約第二十三条に該当する者と認め除名処分に付した。その除名の理由は前示各事実の外原告等に次のような幾多の事実があつたからである。

1  原告Aについて

(イ)  昭和二十三年六月末中部日本新聞の紙上に交通局資材課係長等の不正事件が掲載されていたのを利用し、原告Bと共に、右記事を赤インキで囲み「交通局の赤字の原因はかかる処に存する我々の賃金闘争の実現しないのもこのような不正があるからだ斯る局の不良幹部即ちねずみ共をたたき出せ」と書きたて、これを被告組合支部掲示板に掲示せよと要求して来た。

(ロ)  右の事件につき支部役員と会談した結果、今後組合運動と別個な問題はこれを取上げぬことを約したに拘らず、なおも原告Bと共に、当時中京新聞紙上に「賃上に対する市側の対策として考えられた女子車掌の整理」と題する記事のあつたのを利用し「交通局は赤字の原因を女子車掌の首切に変えようとしている斯る不良幹部を組合員の圧力で追い出そう」と書いたアジ宣伝のビラを持つて来た。

(ハ)  同年七月二十七日被告組合は原告Aの再三にわたる組合員としての非行に対し、組合運動における重大時機の自覚を持たせるため謹慎を命じ同原告もこれを承認したに拘らず、翌二十八日日本共産党名古屋市委員X外一名を通じて反省の色もなくその取消を求めて来た。

(ニ)  同月三十一日原告Bと共に、共産党その他の団体主催にかかる人民大会に参加し、前記被告組合のとつた処置を不当であると決議し、右大会の実行委員五名を介して右処分の取消を迫つて来た。

(ホ)  同年八月二日及び三日の両日にわたり原告Bと共に、職場において共産党発行にかかるビラを散布したが、そのビラには原告等の前示主張を正当なりとし組合委員をボス幹であると断じ委員会を反動的であると非ぼうしてあつた。

2  原告Bについて

(イ)  前掲(イ)(ロ)(ニ)(ホ)記載のごとく、原告Aと共に被告組合の組織を破壊に導くような行為をした。

(ロ)  同原告が名古屋市交通局高辻車庫において共産党細胞群機関紙「信鈴」を配付した行為は従業員の執務時間寸前より執務時間中にわたりなされたもので、職場の秩序を乱すばかりでなく、右機関紙に載せられた記事の内容は組合が自主的且つ民主的に決定した事項に対し反対を唱えこれを覆そうとするもので組合の運営を阻害しその統制をかく乱したものである。

二、右除名処分には原告等主張のような手続上のかしはなく、又その除名処分はそれぞれ充分な理由を具えたものであつて少しも不法の点はない。

1 本件除名の手続としては、昭和二十三年八月十三日午後一時より開催せられた被告組合第十六回中央委員会において高辻支部より原告両名の除名の申請がなされ、出席委員数の過半数の賛成を得てその承認の決定がなされたのである。従つて右除名の決定は有効に成立しているものであつて、何等のかしがないと云わねばならない。

2 本件除名処分の理由につき若干の説明を加えれば次の如くである。原告Aは被告組合より再三の注意を受けたに拘らず、組合員として逸脱した行為を繰りかえした。殊に被告組合の認めない名交高辻細胞の署名を使用してビラを作成したごとき、被告組合の名誉をき損すること甚しい。次に原告Bは機関紙「信鈴」配付行為につき当然その責任を負うべきである。右「信鈴」中の被告組合を批判した記事はとうてい言論の自由の範囲に属しないし、又同原告は細胞の一員としてこれが共同執筆に当つた以上その責任を免れ得ないこと勿論である。

被告組合は原告両名の除名問題を極めて慎重に取扱つた。すなわち原告両名を出席させた高辻支部委員会において無記名投票により同人等の除名を決定した後、中央委員会に申請してその承認の決定を受けたのである。そもそも組合の統制は組合員各自が組合の規約決定事項等を尊重することによつて保たれるのであり、組合はその統制を保つことによつて始めて組合員の利益を保護し得るのである。原告両名が組合の統制を乱し名誉を汚し組合員から指弾を受けた以上、組合高辻支部が除名の決定をなし中央委員会がこれを承認したのは当然であつて少しも不法でなく不当でもない。(立証省略)

三、理  由

一、被告組合が名古屋市交通局の従業員及び被告組合中央委員会の承認をえた者をもつて組織する労働組合であること、原告両名がいずれも同交通局高辻車庫に勤務する従業員であり被告組合の組合員であつたが、昭和二十三年八月四日被告組合高辻支部長aより組合員除名の通告を受けたことは、いずれも当事者間に争のない処である。ところで、原告等が右のように被告組合より除名処分を受けるに至つた理由は、原告等に下記(1)(2)の各事実のあつたためであることは当事者間に争ない処であるが、この外後記(3)の事実も亦右除名処分の理由となつていたことは、成立に争のない甲第二、三号証、証人aの証言及び本件弁論の全趣旨に徴して明らかである。

(1)  原告Aは、昭和二十三年七月二十二日当時争議中の愛知時計電気株式会社労働組合の闘争を応援するため、同会社工場前の電柱に「自由か奴れいか団結だ頑張れ」と書いた日本共産党名交高辻細胞の署名を用いたビラを貼付した。

(2)  原告Bは、同年七月頃名古屋市交通局高辻車庫内で(従業員の執務時間中であつたか、車庫が職場といい得るかどうかは別として)日本共産党名古屋市交通局細胞群機関紙「信鈴」を配付した。右「信鈴」には被告組合を批判する記事が載せてあつた。

(3)  同年七月二十七日被告組合が原告Aの組合員として行きすぎた行動に対し謹慎を命じたところ、同原告は翌日日本共産党名古屋市委員X外一名を通じてその取消を求めて来た。又同月三十一日原告両名は日本共産党その他の団体の主催にかかる人民大会に参加し、その席上被告組合が原告に謹慎を命じたことは不当であると決議し、右大会の実行委員五名より被告組合に対しその取消を要求して来た。なお同年八月二日及び三日の両日にわたり原告両名は日本共産党発行のビラを職場に配付したが、そのビラには原告等の主張は正当であると強調し、組合委員をボス幹であると非難し同委員会を反動的であると誹ぼうしてあつた。

ところで前記(2)の事実に関し、原告Bが「信鈴」を配付した行為が、従業員の執務時間中であつたかどうか又配付場所たる車庫が職場といい得るかどうかの点を考えてみるに、車庫はもともと市電乘務員の交替の場所であり執務とは右の交替の行為をも含むと解せられるから、車庫は市電乘務員の職場の一部であること云うまでもなく、交替のため車庫に集つて来た人々にビラを配付することは従業員の執務時間中にこれをなしたものと称して差支ないであろう。

二、中央委員会における決議の有無について

原告等は本件除名処分は被告組合の中央委員会の決議を経ていないから無効であると主張し、被告は右除名処分については中央委員会の決議が有効に成立していると主張するから、まずこの点について考察する。

証人a、b、c、dの各証言を綜合すると昭和二十三年八月十三日午後一時より被告組合第十六回中央委員会が開催せられ、その席上高辻支部から原告両名に対する除名申請が提出せられた。右議案に対し一、二質疑応答があつた後、議長が除名に対する賛否の決をとつたところ、委員中より異議なしと叫ぶ声が多数あり異議を申立てる者がなかつたので、議長は異議なきものと認め除名に決する旨宣言したことが認め得られる。右認定に反する証人eの証言は前記各証言に対比し(殊に同証人が原告等を支持する立場にあり、右委員会においても種々除名理由を質問している点等よりみて)たやすく措信しがたい。又成立に争のない甲第四号証(中央委員会報告書)には、原告等の除名の決議についてなんらの記載がなされてないが、証人cの証言によれば、従来同委員会においては被除名者の氏名を(同人に対し気の毒というような意味合から)報告書に記載しない慣例であつたことが認められるから、甲第四号証に除名の決議が記載せられていないことだけの理由をもつては右の認定をくつがえすことは出来ない。そこで、前記のような中央委員会における決議の方法が有効であるかどうかの点を考えるに、一般に会議における議案の採決の方法としては投票、賛成者の起立、挙手等の方法によつてなされることが多いであろうが、しかし決議の方法定足数等について当該会議体において別段の定めがなされていない限り、他の如何なる方法(それが多数者の意思を確認するに適当な方法でさえあれば)によるも許容されるものと解すべく、従つて議長から議案に対し異議はないかとの問がなされたに対し異議なしとの口頭の応答がなされて成立した決議も、それにより賛成者が過半数であることの確認がなされた以上、これをもつて無効の決議となすことのできぬのは勿論であろう。本件において、被告組合の中央委員会における決議の方法定足数等につき別段の定めがあつたことについては原告等よりなんらの主張立証もなされていないから、前示認定のように議長において除名の賛成者が過半数に達したことを確認し除名に決する旨宣言した以上、右除名決議は有効に成立したものといわなければならない。

三、除名の当否について

次に原告等は、本件除名処分はその理由が不法不当であり無効であると主張するから、この点について考究する。

(一)  前記(1)の事実について

原告は、原告Aが勤務時間外において愛知時計労働組合の闘争を応援するため前示のようなビラを貼つたことは、労働者として当然なすべき行為であり個人に許された自由活動の範囲内であるから何人からもその責任を追及さるべきでないと主張する。なるほど、原告Aが個人として政治的社会的活動の自由を有することは原告主張のとおりであり、このことは憲法も保障し成立に争のない甲第五号証によれば被告組合と名古屋市との間の労働協約第五条もこれを明記している。しかし他方、原告Aが被告組合の組合員である以上、その組合構成者として組合の統制に服しなければならぬことも勿論であろう。けだし労働組合も一個の団体である以上その構成員が団体の規律と統制に従うべきことは絶対の要請だからである。従つて、原告Aが被告組合に止まりその組合員として行動する限り、その政治的活動をなすについても被告組合の意思に背反してならないことは当然である。原告Aの前記ビラ貼り行為が全然被告組合の統制を離れた、個人の自由活動の範囲内の行為であるとの原告の主張はとうてい首肯できない。次に原告は、右争議応援のビラには日本共産党名交高辻細胞の署名が入つているが、これは被告組合の署名ではなく被告組合には何の関係もないから、右ビラ貼付について被告組合の承認を得る必要なく、又名交高辻の名を日本共産党細胞の上に冠することは、同党が国法の認める合法政党である以上被告組合の名誉をき損するものでないと主張する。しかし、原告Aが右ビラの署名中に日本共産党の下に続けて名交高辻の文字を使用したことは、字句の正確な語義より論ずればもとより被告組合の名義を用いたことにはならぬかも知れぬが、少くとも第三者より見て右ビラの作成者が被告組合なりと誤認せしめるおそれが充分あろう。従つて、同原告が被告組合の機関にはかることなく前記のごとき名義を用いてビラを作成貼付したことは、世人に対しあたかも被告組合が特定の政党を支持後援しおる如き印象を与え被告組合の意思にもとることとなろう。従つて右行為は被告組合の機関の存在を無視しその名誉をき損したとの非難を免れ得ない訳であり、この点に関する原告の主張も亦採用し難い。

(二)  前記(2)の事実について

原告は、原告Bが「信鈴」を執務時間外に特定の者に配付したことは個人の政治的社会的自由行動の範囲内であるから、被告組合の機関にはかる必要はないと主張する。しかし、原告の右「信鈴」配付行為が一般従業員の職場たる車庫における執務時間内の行為なりと解すべきこと前述のとおりであるから、これをもつて単純に原告Bのみに関する個人的な行為とは考え得ず、従つて一般従業員の組織たる被告組合の機関の意思を無視して行い得ないものといわねばならない。よつて、右「信鈴」の配付行為が純粋に原告Bの個人的な自由活動の範囲内であるとなす原告の主張は失当であり排斥する外はない。又原告は、右「信鈴」中の被告組合を批判した記事は言論の自由の範囲内に属し、他からなんら干渉すべきものでないと主張する。もとより、原告Bが個人の地位において被告組合の態度を批判した記事を公にすることは言論の自由として許され、他よりみだりに干渉し得ないことその主張の通りである。しかし、原告Bが純然たる個人の立場を離れ被告組合の組合員として組合を批判する記事を公表する場合には、被告組合の統制に服しなければならぬことも亦当然である。即ち、被告組合はその組合としての立場から組合員の不当な言論に対し或る程度の制約を加えることは、場合により止むを得ざる処置として是認されねばならない。ところで、成立に争のない甲第一号証によると、右「信鈴」の記事中には或いは組合の決定事項に対し反対を唱え或いは組合の運営についての外部の批判を書きたて、被告組合の統制を乱すものを含んでいるから、被告組合がこれに対し組合の立場から或る程度の制約を加えることは、なんら原告の言論の自由を侵害するものではない。従つて原告のこの点に関する主張も亦理由がないといわねばならぬ。なお原告は、右「信鈴」の執筆者は原告Bでないと主張するが、右執筆者が誰であろうとも原告Bが右記事の内容を了知してこれを職場に配付した以上、原告が右記事の発表につきその責任を負うべきことに変りはないであろう。

(三)  前記(3)の事実について

原告両名が、前示(1)及び(2)のごとき組合員として不当な行為を敢てし被告組合より謹慎を命ぜられた際、原告等においてこれに不服があるならば組合所定の手続を経て自己の行為につき弁明をなすべき機会を求むべきであつたに拘らず、徒らに外部の政治団体等に訴え外部団体の圧力をかつて右処分の取消を強要した如きは、組合員として不穏当な行為であり、組合内の秩序を破りその統制を乱したものと評価せざるを得ない。被告組合が原告両名のかかる行為を非難し、これを除名理由の一に数えたことも蓋し当然の処置であつて、これを肯認せねばならない。

以上のように、原告等の行動は被告組合の組合員としてその許された行動範囲を逸脱し、組合の統制を乱しその名誉をき損したものと云うことができる。ところで、凡そ団体はその組織を維持するために内部的規制を必要とし、これなくして到底その円滑正常な運営を期し難い。従つて、団体はその組織員に対して制裁をもつてその違反なきよう警告し、違反の甚しい者に対してはこれを組織外に排除する措置を講じ得なくてはならない。このことは団体法理から必然に生ずる帰結であつて、特に法律の規定を要するものではない。労働組合も一の団体である以上、その統制に従わない組合員をその組合より排除するためこれを除名し得ることは当然であろう。しかしながら、除名はその者を組合から追放する重大処分であるから、右除名のためにはその者の行為が著しく反組合的であつて、組合に大きな損害を与えたとか組合の維持ないし発展に脅威を生ぜしめたものでなければならない。そこで、原告等の前記各行為を観察してみるに、原告等は組合の秩序を乱し名誉をき損し且つこれに対する被告組合の処分に対し反抗的な態度を示したものであつて、かかる反組合的性格は組合の維持ないし健全な発展に障がいを与え、組合の存立目的と両立し難いものと云わなければならない。従つて、被告組合高辻支部がその総意をもつて原告等の除名を決議し、被告組合中央委員会において右除名の決定を承認したことは、被告組合として止むを得ざる処置であつたと考えられる。元来、労働組合の内部における規律と秩序の維持はその組合の自主的統制に委すべきものであり、その特に著しい行きすぎのない限り、外部から無暗にこれに干渉すべからざること勿論である。しかして本件における被告組合の除名処分を見るに、前記の如くその処置はすべて妥当であつて、特にこれを無効と解すべき根拠は発見されない。

上述のような訳であつて、原告等の本件における主張はいずれもその理由がないから、本訴請求は失当としてこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条第九十三条を適用し、主文のように判決する次第である。

(裁判官 山口正夫 中瀬吉信由 黒木美朝)

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